プライベートウォールについて考える

お知らせ

さて、みなさん緊急事態宣言が解除されて各地のクライミングジムが続々と営業を再開されていままで登れなかったストレスを発散されていることでしょうか?

今回のCOVID-19で自宅での長引く自粛生活の中で皆さん工夫してトレーニングする姿がInstagramでよく見られました。

中でも一番多かったのは、懸垂型ラックにフィンガーボードやキャンパスラングを取り付けて懸垂トレーニングというのが一番多かったように思います。

(当店でも懸垂ラックとフィンガーボードの販売をしておりますので気になる方はご相談ください。)

しかしながら、懸垂ラックを使用したトレーニングはしょせんクライミングの補助トレーニングです。
本格的なクライミングトレーニングをするには、実際にクライミングウォールで登ることが最大のトレーニングと言えるでしょう。
ということでwith COVID-19でクライミングジムが休業・閉店していく世界ではクライマーにはプライベートウォールが必要になってきますね?
プライベートウォール、、、、クライマーにとっては夢のような素晴らしい響きですね。
大半のクライマーが一度は夢見るのではないのでしょうか?
何故大半のクライマーが夢見るだけで終わるかを紹介していきます。

1.広さの問題

一般的に十分なクライミングトレーニングをする場合、高さ3m・幅2.5m以上必要であると言われています。
この法則に則れば通常の住宅では不可能ですね。
(住宅基準法では高さ2.1m以上で一般的な天井高さは2.3m程度です。)
では何故高さ3m以上必要になるかというと、おおよその大人の伸長は150cm以上です。
手を伸ばすと余裕で2mを超えます。足を少し上げて手を伸ばせば2.3mは直ぐに届きます。ボルダリングでまともな課題を作ろうとすれば、5手~8手分のスペースが必要になってきます。
これが、高さ3m・幅2.5m以上必要であると言われる正体です。
かの有名なムーンボードが高さ3.15m・幅2.44m・奥行2.35mでこの広さに酷似していますね。
しかもこれはウォールを設置する最低限の広さなので、ストレスなく登るためには更に左右と奥行に1m以上の余裕が必要になります。

2.施工の問題

さて、もし仮にウォールを設置できる広さを自宅に確保したとしましょう。
次に立ちはだかるは施工の問題です。
クライミングウォールは単純な形状であれば比較的簡単に設計することが出来ます。
しかし、実際に施工するとなると話は別です。
クライミングボードは何mmの板厚を使用するか?
ボルト穴何個を大きさ何φの穴をあけるのか?
下地の強度確保は?
と、こんな感じで一般の建築士では分かりません。
よく起こすミスでは、ホールドを取り付けた時にボルトが飛び出ることが分かっておらず、ウォールと下地の間に隙間が無くてホールドが取り付けられないといったことが良くあります。
施工前には必ずプロの方に聞きましょう。

3.費用の問題

この問題は施工場所確保の次に高いハードルになる問題でしょう。
一般的にクライミングウォールを成り立たせるには3つの物が必須です。
・クライミングウォール
・ホールド
・マット
専門の業者へ依頼すると幾らしますか?という問題についてクライミングウォールの施工は簡単に答えを出すことが出来ません。
これは単一的な施工状況では無いからです。
下地が鉄骨であれば、施工が木材よりも困難になります。
また、屋外であれば自立式にしなければなりませんし、材料に耐候性と防腐の処理をする必要があります。
ちなみに大まかにはウォールとホールドとマットは、ほぼ同額です。

4.ホールドの問題

クライミングウォールを施工する場合、何とか自分でDIYして作って費用を抑えようとします。
マットも極論を言えば個人で使用するだけれあれば安全を確保できるような材質のものを使用すれば費用を抑えることが出来ます。
しかし、ホールドは費用を抑えようとすると思わぬしっぺ返しがあります。
良くヤフーオークションやフリマサイト等でホールドを安く販売されていますが、正直品質はカナリ良くないように思います。
例えばウォールとの設置面が歪んでいて安全に設置出来なかったり、フリクションが良くなかったりと、一般的なクライミングジムと比べてかなり見劣りしたホールドが販売されています。
ホールドの一般的な価格の目安は大人のコブシの大きさで1個、2000~3000円程度です。
そして、1820mm×910mmの1枚のウォールに20個程度使用します。
大小さまざまなホールドを付けて1個あたり平均的に1200~1500円として、1枚のウォールに24,000~30,000円かかります。
仮に高さ3m・幅2.5mの場合、5枚程度のウォールになります。
5枚のウォールに使用されるホールドは12万~15万円かかります。
この理屈で言うと、ウォール施工・マットを足すと3倍かかるのでかなりの金額になりますね。
ここで計算したホールドの価格はあくまで一般的な価格です。
少し大きなホールドになると直ぐに1個1万円なんてのはざらにあります。
クライミングジムと同等の課題を作ろうとすると倍近くのホールドの費用がかかります。
そして、人間は飽きる生き物です。
ことクライマーに関しては1度登った課題を何回もリピートで登るなんてことはあまりしません。
ホールドは使用強度としては5年程度と言われていますが、頻繁に使用していると持ち方を覚えてしまうので直ぐに飽きます。
沢山のホールドストックを持つクライミングジムでは、組み合わせを多く作ることが出来ますが、ホールドストックに余裕のないプライベートウォールでは、ホールドの組み合わせが限られています。
なので、ホールドを定期的に買い足して行かなければなりません。
つまり、多くの人が誤解していると思いますが、クライミングウォールを作って終わりではなく、使えば使うほど(ホールドに飽きるペースが速くなるので)ランニングコストがかかります。
そして、ウォールの形状にも飽きます。
ということでプライベートウォールは、趣味で1人で所有するにはカナリ費用が掛かります。

5.ルートセットの問題

最後に最大の難関であるルートセットの問題があります。
ルートセットは誰でも出来ますし、品質(出来、不出来)について一律で図ることが困難です。
なのでプロのルートセッターに依頼することが望ましいですが費用としては3万円前後かかります。
ルートセットのように無形物(しかも一定期間のみ)に費用を捻出する個人のかたがいらっしゃらないのが実情でしょう。ちなみにクライミングジムでプロのルートセッターを使用するにはそれなりのメリットがあります。
自分の思った課題を作るには登る経験値とは別に、ルートセットとして豊富な経験値とホールドを必要とします。
万人に受けるルートをセットすることは難しいですが、自分がトレーニングとして必要とするルートセットを可能とするにはルートセッターとホールドは切っても切り離せない関係と言えるでしょう。

どうでしょうか?
今回は、ざっくりとプライベートウォールを作るのに大きな障害となる問題を取り上げました。
(これ以外にも問題点は沢山ありますが・・・)
これらの問題を解決するには相当な資金と周りの理解が必要です。
有名な選手はやはり自宅にプライベートウォールを持っていたりします。
いずれの選手も十分な広さでその辺の小さなクライミングジムより立派なウォールをたてているようです。
どの業界でも中途半端は投資ではなく、思い切った投資でそれに見合う(考え抜かれた)努力をしています。
子供を育てる親の器量の大きさも必要なのか?

因みに、かの有名な小山田 大さんはその昔、実家の車庫に小さなプライベートウォールを作り、コンクリートを固めてホールド作ったり、拾ってきた石を削ってホールドを作ったりしてウォールに張り付けてトレーニングしていたそうな。
それで日本一になるのだから凄まじいモチベーションですね。
やはり最後に物を言うのは不屈の精神(根性論)なのでしょうか・・・・?

With COVID-19における世界では、これまでのように人と人が交差するクライミングジムをリスクと考える人にとってはクライマーがプライベートウォールを持ちたいと思うことは自然の考えでしょう。
もし、一流を目指すのであれば迷いなくプライベートウォールは必要ですね。

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